印刷会社が自社の強みでもある印刷技術・ノウハウを活かしつつ事業領域拡張のために行っている新しい取り組みについて紹介します。
ペーパーレス化の影響もあり、従来的な印刷事業が縮小しているのは事実ですが、印刷業界が衰退産業かといえば、そうではありません。
例えばDXの取り組み。
印刷業界ではWindows95やインターネットが身近になる以前、90年代の半ばからDTPによる印刷物のデジタル化を推進して、出版社から印刷会社への入稿をオンライン化するといった体制を早々に確立しています。
また、マンガも含めた電子書籍などデジタルコンテンツのビジネスでは、iモード時代からIT系企業とともに市場をリードしていたのは大手印刷会社のグループ企業でもあります。
テレワークという意味では、クリエイターやコンテンツホルダー(出版社など)、そして印刷会社はオンライン上でのデータ共有が当たり前の環境。コロナ禍よりもずっと以前から、働き方改革を促進してきた業界ともいえます。
印刷会社の多くは企業規模の大小にかかわらず事業領域の拡充に注力しています。印刷事業とのシナジー効果が高い周辺ビジネスでサービスメニューの幅を広げるケースもあり、以下に代表的な3つのサービスを紹介します。
印刷会社が企業から依頼される印刷物には商品カタログやパンフレット、チラシなど広告宣伝に関連するものが多数あります。それらは当然、当該企業のマーケティング戦略が反映されているわけで、ウェブサイトや動画などデジタルコンテンツもまとめて印刷会社が制作を受託することで、統一性の確保ややりとりの手間、そしてコストなどの優位性を打ち出せます。
印刷事業の中にもセキュリティ技術を活かしたサービスはあります。商品券をはじめとする金券や証券、そしてICカードなどは複製防止や偽造防止を目的とした、特殊な加工技術・用紙を利用した印刷物制作が求められます。ペーパーレス化が進むとはいえ、複製・偽造を防ぐというセキュリティ強化のニーズは時代にマッチしたものともいえます。
世の中に出回っている多くの商品はパッケージや包装に印刷物を使用しています。デザインや印刷が必要となるのは個包装や外装のみならず、店頭の販促ツールとなるPOPやポスター、ノベルティなどマーケティング関連の制作も含まれるもの。印刷会社の中には広告代理店とも競合する領域において、制作の優位性などから事業を伸ばしているケースもあります。
自動車業界やエネルギー業界も大きな変革を迫られている時代。その意味では、印刷業界はむしろ早くに多角的なビジネス展開に取り組んできた企業が多々存在する業界ともいえます。マーケティングやアウトソーシングなど顧客支援サービスでは、クライアントのニーズに応えられる企画力や柔軟性、迅速さなど中堅印刷会社でも強みを発揮できる分野です。